漫画をめぐる日本と中国


けっこう漫画好きだったりする。
なので、上海に住んで日本の雑誌がみれなくなったのが割とイタイ。


もちろん上海でも漫画は読める。
日本人がたむろする地域にいけば漫画喫茶はちらほらあるし、
倍くらいの金で週刊誌を買うことも可能だ。
ちなみに漫画喫茶は概して日本並みの価格(3時間で1000円くらい)。
好きなら行きゃいいじゃん、って話だけど、
ただまぁそこまでの熱意はないってだけだったりする。
たまにちょっと疼く程度、気まぐれなファンですハイ。


日本の漫画・アニメが世界中で人気ってのはもう常識で、
もちろん中国でも例外じゃない。
今中国語を教えてくれている大学生は、
子供のころにスラムダンクを読んでバスケを始めたらしい。
今日本語を教えてる中学生は、ワンピースが大のお気に入りで
いつもチョッパーの帽子をかぶって勉強している。
共通しているのは、彼らは日本の漫画がきっかけで
日本文化に興味を持ち、日本語を学びはじめたということ。
漫画の果たす役割はかくも大きい。


中国の大手ポータルサイト騰訊(テンセント)にて
『90後(90年代以降に生まれた中国人)必読の漫画ランキング』が紹介されていた。


1. 『ONE PIECE』
2. 『ナルト −NARUTO−』
3. 『BLEACH
4. 『犬夜叉
5. 『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』
6. 『テニスの王子様
7. 『ヒカルの碁
8. 『銀魂
9. 『火鳳燎原』(香港の漫画家の、三国志を題材とした作品)
10. 『名探偵コナン


ほとんど日本の漫画だったりする。
1000億元(約1兆3500億円)以上とも言われる中国の漫画・アニメ市場だが、
こと漫画本市場においては、その90%以上が日本の作品なんだそうだ。

ちなみに漫画単行本は一冊10元(約135円)弱、
デラックスサイズだと50元(約675円)以上はする。


中国で日本の漫画が読まれるようになったのは、
改革・解放後の80年代からのことらしい。
当初は鉄腕アトムジャングル大帝などが読みだされ、
その後ドラえもんや星闘士星矢、美少女戦士セーラームーンなどが人気を博した。
当時はフィギュアなどのグッズもバカ売れしたそうだ。
その後登場したクレヨンしんちゃんポケモンも含め、
偽ブランド市場では今も彼らの模倣品が溢れている。
当事者にとっては頭の痛い問題だろうが、
皮肉にも模倣品の数が人気のバロメーターだったりするわけなんだな。



2009年中国コンテンツビジネスに関するJETRO調査報告書をみると、
中国の漫画雑誌がはじめて出版されたのは93年とのことらしい(『画書大王』)。
けっこう最近だ。
中国では、雑誌を発行するには必ず「刊号(雑誌コード)」を取得しなくてはならず、
新聞出版総署という機関から認可をもらうらしいが、これが大変なんだそうで。
条件は、資本金30万元以上、国家規定資格条件の編集専門員を要すること、
代表人は中国国内に長期居住している中国公民、などなど。
新聞出版総署は雑誌総量をコントロールする役目らしく、
新規で認めてもらうには結構ハードルが高いんだそうだ。
ちなみに中国のオリジナル漫画中心の雑誌は長続きしているものが少なく、
今はほとんどの雑誌が休刊もしくは停刊状態なんだってさ。


現状、まだ中国では漫画=子供が読むものとなっている。
まぁ世界的にもそうか。逆にいい大人が漫画を愛読する日本が例外なんだろな。
ただその分日本は産業としても規模が大きくなって、
ストーリーやテーマも重厚に作り込まれるようになったことで、
アニメ以外にもドラマや映画など実写にもなりうるコンテンツになっている。
中国はまだ漫画雑誌が生まれて20年足らずなわけだから、
戦前・戦中から漫画が読まれてた日本と比べれば、
中国の漫画産業はまだまだ発展途上なんでしょう。
また電子書籍の話題が日本でも今かなりアツイが、
中国でも漫画のネット配信サービスが一部で登場してきている。
こういう試みがもっと増えると、海外に住む人間にとっては非常にありがたい。

中国の漫画サイト『点撃動漫網』。日本の漫画も配信されている。



中国漫画が日本語に翻訳されて日本人に読まれる。
そんな日が遠くない未来にやってくる。のかは知らない。
なんか疼いてきた