走れ!パシリ屋 in 上海


上海はどういうわけか出前激戦区だったりする。


日本でよくある、昼休みと同時に蜘蛛の子を散らすかのごとく
オフィスビルから人が大量に流れ出すような光景は、
上海の一部の地域を除いてあんまり見かけない。
平均的な中国人は、昼食を出前で済ませることが結構多いのだ。


ローカル食堂の出前はもちろん、
上海ではマクドナルドもケンタッキーも宅配サービスをしている。
配達料は、マクドナルドが7元でケンタッキーが6元(共に100円弱)。
しかも24時間対応っていうから凄い(地域差はあるかもしれない)。
さすがにアッツアツのホックホクはイマイチ徹底されてはいないものの、
とにかく出前のニーズは非常に高い。
上海富裕層の多くは自宅に家政婦さんを雇っているので、
「雑事は外部に委託、我ムダに動かず」が染み付いているのかもしれない。

左がケッタッキー、右がマック。自宅のポストによく入っている。

ケンタッキーの宅配チャリ


んで、そんな宅配ニーズあふれる上海にあって、
個人で営業している「買い出し代行業者」がいる。
通称・パシリ屋。
彼らは電話1本でファーストフードやファミレスの持ち帰り弁当を
買ってきてくれて、ついでにコンビニで飲み物だってお願いすることも可能。
もちろん複数の店でもOK。この臨機応変さが最大のウリだ。
やり手のパシリ屋は、自分の行動範囲である店をメニュー化してチラシをつくり、
ポスティングもしたりする。なんともたくましい。
ちなみに料金は1回10元程度(約135円)。
ざっくり勘定してみたところ・・
昼時間が11-13時、夜も18-20時くらいとして
一度の買い物で2件くらいまとめて買えば30分で2件、4時間なら16件。
仮に1日ノルマを15件としても1日150元の収入。
月22日労働としたら3300元(約44,550円)。
上海の最低賃金は1120元っていうんだから、その3倍ならば結構な商売だ。
ちなみに上海の大卒初任給とほぼ同額だって。
【上海、最低賃金アップ】
http://jp.eastday.com/node2/home/xw/sh/userobject1ai51899.html
【2010年大卒予定者の平均初任給、4.2万円で上海がトップ】
http://news.livedoor.com/article/detail/4484923/


今年1月、クロネコヤマトのヤマトHDが上海に進出した。
日本で成功した高品質宅配ビジネスを中国でも普及させると意気込んでいる。
黒船ならぬ黒猫来航。
試しに一度使ってみたけど、ドライバーは全員ヤマト社員でサービスレベルも高い。
聞けば開始3ヶ月でクレームゼロだという。日本品質は実現できているようで、
某大手アパレルメーカーも全社でヤマトに乗り換えたと担当者の方が話していた。
そうした高品質宅配が日本並みに当たり前になるんだろうか。
・・というとたぶん違う。
中国はまだ物流サービス=物が届けばいい、という認識もかなり根強い。
物を投げて渡したり、弁当だってちょっとくらい汁がこぼれたってお構いなし。
文句言っても「大丈夫、大丈夫」と平然と言う。お前が言うな。
でもローカルレベルはこれが一般的だ。
だから多くの人にとって、まだまだ物流と品質はリンクしていない。
ヤマトの「クレームゼロ」も、もしかしたら日本ではクレームになりかねないミスも
普通に見過ごされていたっていうことなのかもしれない。


中国はかつて世界の工場と呼ばれたような
製造業中心の経済発展はもう終焉に近づいている。らしい。
とすると今後、この13億の国民の雇用を創出し、経済を発展させるのは
ソフト・サービス業が中心となるべきで、そこには物流業の締める割合も相当大きい。
生活レベルの格差が大きい中国では、ヤマトのような高品質サービスの一方で、
格安&品質最低限の「運び屋」もまだまだニーズがあるんだと思う。


なじみのパシリ屋も最近2人ほど新たに人を雇ったらしく、
最近はローテーションを組んで配達をしている。
うーむ、組織になってきたな。出世してはる。
こうした個人のバイタリティで日銭を稼ぎだせる余地があるのも
中国のダイナミズムの一つなんだろーな、と思ったり。


というわけで明日もたのむよ、パシリ屋さん