31億人の正月大移動


日本の年末年始が過ぎ去り、まもなく中国の正月を迎える。


今年は例年よりも少し早く、1/23が正月初一なので、
1/22から28までが正月休みということになる。
「え、もう来週末じゃないか」と書いてて今更気づくのだ。


中国の旧正月春節)における帰省ラッシュのすさまじさは知られたところで、
そうした正月前後の民族大移動を「春運」などと言われる。
基本的には旧正月前15日から旧正月後25日までの40日間を指し、
今年でいえば昨日8日が春運スタートの日になる。
今年の春運は延べ31億人(!)が長距離移動をするということで、
すでに上海駅や上海虹橋駅では人ごみがえらいことになっているという。
慣れない日本人がいきなり春運ピークの時に乗車率300%の列車にのって、
財布と携帯を紛失し路頭に迷ったなどの微笑ましいエピソードは数知れないのだ。




そんな春運において、毎年話題に上るのが「チケット争奪戦」である。
なにせ延べ人数だと地球の半数近くの人間が大移動するわけだから、
それだけの座席がしっかり用意されているわけがない。
寒い冬空の下でチケット売り場にいくつもの行列が出来上がり、
「チケット購入代行業者」やダフ屋の横行が季節の風物詩となっていた。



がしかし、
今年はついに乗車チケットを購入の際に「身分証明書の提示」が義務付けられた。
もうピンポイントのダフ屋撃退政策である。
個人的には、急な予定でどうしてもチケットを「確実に」手に入れたいケースなどには
ダフ屋の生存価値はあるんだがなぁという気持ちはないわけではないが、
目に余る横行ぶりに当局も看過できないところまできちゃったんだろうと思う。
あとは当日のクソ混雑した駅構内で毎回身分証チェックができるのか?という点で
運用上の懸念は残るものの、ダフ屋産業においては冬の時代が到来したわけだ。



さらに、今年からチケット購入がネットでできるようになった。
ああよかったね!これでトラブルが解消されるね!
などと思ってはもちろんいけない。
不備があろうが何だろうがとりあえず動かせてから修正していくのが中国だ。
案の定、早速システムがトラブルを起こして問い合わせ回線がパンクしたらしい。
「ネットで金を払ったのに乗車券が購入できねぇぞ!」
「同じ画面が何度もでるぞ!」
「どうやって購入するかわからねぇぞ!」
「ネットの接続方法がわからねぇぞ!」
出稼ぎ農民の大部分はネットに詳しくないので問い合わせも色々のようです。


そんな春節休みがもうすぐやってくる。
会社の中国人女性スタッフに聞いてみた。


「田舎に帰って何するの?」
「家族とご飯たべて、友達と会ってお喋りして、ゴロゴロしてます。」
「年に1回の帰省だから楽しみでしょ」
「そうでもないです。昔は楽しみでしたが。」
「なんで?」
「甥っ子にお年玉あげなくちゃいけないし、
ろくに働かない弟にまでお小遣いをあげなければなりません。
手ぶらじゃ帰れないからそれなりのお土産を買わなくちゃいけないし」
「ふーん」
「実家に帰るたびにお金が減ります」
「ふーん」
「お母さんは結婚はまだかまだかと言ってきますし」
「大変だね」
「お父さんは浮気してます」
「えっ」
「だからあまり会いたくないんです」
「へー・・」


春節が年に1回のお楽しみだったのも今は昔か。
ちょっとくらい休み延長してもいいからね、と声をかけておいた。